#56

2022.02.22

木材業界のDXで持続可能な社会を創る!

担当ディレクター:福島 健一郎
毎回、さまざまなジャンルで活躍する方々をゲストスピーカーに迎え、彼らの活動事例などから新たなビジネスにつながるアイデアの糸口を探るディレクターズトークセッション。

2022年2月22日、第56回は、「木材業界のDXで持続可能な社会を創る!」。
聞き手は、福島 健一郎。

今年、業界初となるクラウド対応型の木材業界基幹パッケージを販売したフルタニランバー株式会社。販売管理はもちろんのこと、在庫の仕入れ、注文、出庫まで全体最適で設計開発されていることから、シームレスに業務を行えている。

そこで、1904 年創業の木材問屋フルタニランバーの若き5代目社長である古谷さんをゲストにお迎えし、近年ニーズが高まっている国産材の取扱い強化や木材の価値を高める新事業にも迫ります。

【ゲストスピーカー】
古谷 隆明 氏(フルタニランバー株式会社 代表取締役)

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1904年に創業し、今年で 118年目を迎えるフルタニランバー株式会社。古谷さんはその5代目を勤めており、さまざまな新しい事業を生み出している。

「私が2019年に代替わりしてからは、木材の流通をただ行うだけではなく、木材の価値を向上させる新たな事業を展開しています。また、会社では『社員ファースト』というのを大切にしていて、各自がやりがいを持って活躍できる環境を整えています。基本的には残業等も行わずに、アフターファイブの時間も充実したものになるように促しているところです」

フルタニランバー株式会社の事業や取り組み

フルタニランバーのメイン事業は、北陸3県を中心とした、国内外の木材輸入卸売・小売業、そして加工業だ。海外を含めた独自の仕入れルートを確保し、世界中から直接仕入れられるのが強みであり、直接取引により高品質・低価格を実現している。

多品目・多用途の木材は圧倒的な品揃え。ゼネコンやハウスメーカー、工務店、建具・家具製造業者、木材小売店などの川下企業へ供給している。

主力分野は新築住宅内装部材、商業施設・店舗向け造作材だ。木材の仕入、乾燥、加工、配送まで出来る木材流通のワンストップサービス体制を構築し、その信頼は厚い。

また、近年は林業の担い手不足により日本中で里山の荒廃が進んでいることから、森林を守り、地域林業を活気づけ、自治体や企業と連携し地産地消の木材を利活用していく取り組みも積極的に行っている。

石川県の県木でもある能登ヒバは、耐水性やアロマ効果、消臭効果や抗菌効果など多くの機能性を備えているのが特徴だ。能登ヒバのそういった点を利活用し、最近は新たな商品が多く生まれている。

しかし、能登ヒバの機能性や効果とは異なる新たな利用価値を創造するプロジェクトに取り組んでいるのがフルタニランバーだ。能登ヒバをもう少しスタイリッシュなものにしたいという想いから、能登ヒバを活用しながらさまざまな楽器メーカーとタイアップをして楽器を制作するプロジェクト「ATENOTE(アテノオト)」を行い、新たなブランド価値を生み出している。

「うちの会社では今後、自然に優しい木材を扱うということで、環境に配慮した、そういった取り組みを加速させていきます」と古谷さんは語る。

木材業界に特化した業務パッケージシステム「 treeflow 」

本日のテーマ「木材業界のDXで持続可能な社会を創る!」に深く関わってくるのがこちらの事業。現在、福島さん(アイパブリッシング)と事業化しており、年明けにリリースしたばかりの木材業界に特化した業務パッケージシステム 「treeflow(ツリーフロー)」だ。

木材業界では、近年のウッドショックによる木材価格の高騰の影響を受け、木材不足が続いている。また、国産木材の川上から川下間の有材料供給体制の課題が明るみになり、加えて高齢化による人材不足業務の効率化が急務になっているのが現状である。

これらの課題を解決するために、フルタニランバーとアイパブリッシングの2社が手を繋ぎ、新たな業務パッケージシステムを全国に展開することになった。

すでに1990年代という早い段階から独自の販売管理システムを運用し、改良を重ね、自社内で木材ソフトを利用してきたフルタニランバー。その後の2018年に、アイパブリッシングが新システムの開発を担当し、2019年より本格稼働しながら、同年にシステムの原型が完成。木材業界の業務効率化に繋がる4つのシステムをパッケージ化し、「treeflow」としてのサービス提供がスタートした。

「treeflow」は、木材業界に特化した商品設計が特徴だ。創業118年の歴史をもつフルタニランバーが監修したことにより、現場の使いやすさを最大限に考えたシステム内容や業界特有の業務内容や習慣、事務処理にも対応した設計を作りあげることができたという。

「他の業界の方も、木材システムをリリースされていますが、意外と木材屋のわからない部分だったり、痒いところだったりがあるんですけど、今回それを解消したシステムになっています。」と古谷さんはいう。

「treeflow」は、「販売管理」「在庫管理」「物流管理」「オンラインショップアプリ」の4つの独立したクラウド型システムで構成されており、いずれかのひとつでも導入可能にな っている。これまでの販売管理ソフトを使っていた方にも柔軟に対応しており、これまでのソフトを踏襲しながら、利用できるのは嬉しいポイントだ。

開発から運用、サポートまで一貫して自社で実施しており、クラウド型のため、保守・運用に手間をかけることなく、高いセキュリティと柔軟な働き方を実現可能にした。

販売管理
販売管理は、木材の業界特有の業務に対応し、仕入、在庫、売上、入金、支払い、顧客管理など汎用性の高い性能を備えた基本となるシステムだ。

「通常はアプリ型でパソコンが増えるとその都度パッケージの購入が必要なんですが、このシステムはユーザーを増やしていけるタイプになっていまして、IDとパスワードを入力すればユーザーを増やしていけるというものになります」

どこからでもアクセスが可能であり、コロナ禍においてのテレワークも可能にしたのが
「treeflow」だ。

通常の他のソフトであれば、ソフトが入っているパソコンからのアクセスが必須であり、出社しなければならないが、このシステムはそういった無駄を省き、社外からでもスマホからでもアクセスできるといったものになっているのが特徴だ。

在庫管理
在庫管理は、電子タグを利用し、正確で迅速な数量の把握と、リアルタイムで在庫情報の共有を叶えるシステムとなっている。

製品名や仕様などの情報を埋め込んだ電子タグを在庫に貼り、それらをスキャンすることで商品を動かさずに迅速な在庫管理や棚卸作業が可能となった。これまでの棚卸作業は、一つ一つシステムと現物を照らし合わせて2週間ほどかかっていたそうだが、今では約半日とスムーズに。在庫はタブレットで確認することができ、経験値の浅い社員でも、どこに、どんな材料が眠っているのかわかるようになっているという。

物流管理
物流管理は、出荷から顧客に届けるまでの工程を管理し配送状況を可視化する、いわゆる送り状システム。ヤマト運輸や佐川急便のような送り状ナンバーを入れれば、自分の荷物がどの状態にあるのかわかるといったものだ。

配達開始時に、納品書に印字されたQRコードを配達員の端末で読み取ることで、配送登録ができ、同時に配送予定時刻が記載されたメールが顧客に自動で送られるようになっている。配送が完了した際も同様に、受領書のQRコードを端末で読み取ることで簡単に配送完了登録ができるといった仕組みだ。

「日々の納期確認の電話も、これを導入することで件数を減らすことができました。

これまで納期確認のときには、担当者が電話に出て、そしてそれをもって配送員に確認のために電話をするんです。でも各自が車に乗っていたり作業していたりすると、電話に出られなくて。電話に出た頃にはもう荷物届いてしまうなどといったことが多かったんですけど…。

導入後は、お客さん自身で自分の注文したもののステータスがわかるので便利になりましたね。」

オンラインショップアプリ
オンラインショップアプリは、事前に会員登録をしている顧客を対象としたBtoB向けECサイトだ。Webサイトのほか、iOS版・Android版のスマートフォン向けアプリにも対応している。

従来は、注文電話を受けた際に事務や商品担当、営業など順番に伝票をやりとりする必要があったが、導入後は注文情報が事務担当者と出荷担当者の端末に自動で送られるため、伝票でのやりとりが不要になり、情報共有のスピードが早まりリードタイムが短縮できるようになった。

また、サイズの違いや枚数の違いなどのヒューマンエラーを減らすことも可能にしたのだ。

以上の 4 つから構成されているのが「treeflow」である。

「今後の木材業界において、効率化を図っていくことが本当に重要です。商品化までの時間を短縮するとか、職人が少なくなってきたので、熟練熟練の職人じゃなくてもできるような仕組みを作るなどとか、そういったことが大事なのかなと考えています。

あとは木材の価値を高めるために、木材の見え方やブランディングにも力を入れていきたいです。

SDGsとか、カーボンニュートラルとか、そういった言葉が有効だったりもしますけど、環境への取り組みは、もっと広がっていくと思うんですね。その上でも、こういった事業を展開していくことで、木材利用の促進や価値を創造していくといったことを進めていきたいです」

まだまだスタートしたばかりの「treeflow」だが、その未来は明るくなってきた。木材業界のDXで持続可能な社会が作られていくこと、そして木材業界自体の価値があがっていくのが楽しみだ。

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話し手
古谷 隆明 氏
(フルタニランバー株式会社 代表取締役)

聞き手
福島 健一郎
(IT ビジネスプラザ武蔵交流・創造推進事業運営委員会ディレクターアイパブリッシング株式会社 代表取締役)

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