#43

2020.02.21

AI時代を控えた今、北陸で必要な人材とその獲得方法とは?

担当ディレクター:福島 健一郎
毎回、さまざまなジャンルで活躍する方々をゲストスピーカーに迎え、彼らの活動事例などから新たなビジネスにつながるアイデアの糸口を探るディレクターズトークセッション。

2020年2月21日、第43回は、
AI時代を控えた今、北陸で必要な人材とその獲得方法とは?
聞き手は、福島 健一郎ディレクター。

地方も含めて深刻な人材不足に苦しんでいる昨今、大企業はもちろん、中小企業も存続をかけて人材育成や人材獲得に頑張っています。 しかしその一方で、AIやIoTなどのテクノロジーを活かした業務効率化も進み始め、銀行をはじめ大リストラを行っている業種も出てきています。 今、必要な人材はどういう人材なのか、そして地元の中小企業はどう人材を獲得していけば良いのかを、長年、北陸を中心に人材派遣などを手がけてきた株式会社エー・オー・シー専務取締役 兼 派遣事業本部長の本多さんにお伺いします。

【ゲストスピーカー】
本多 温史 氏(株式会社エー・オー・シー 専務取締役 兼 派遣事業本部長)

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同志の指標となる

株式会社エー・オー・シーの創業は1991年5月。アウトソーシングをメインとした事業から始まり、派遣業の自由化業務が解禁になったのを機にアウトソーシングに加えて人材派遣を軸として活動してきた。

本多さんが入社した1995年は人材派遣の認知度がまだ低い時代だった。
もともと人事に興味があったわけではなく、人材を扱う会社、人材でいろんなことをやっている会社だと認識し、これから新しく発展していく事業だと思い好奇心を持って入社したという。

創業当時は工場の一部の工程を丸ごと請け負い、独立性を持って生産し、その対価を得るというビジネスだったが、業務請負業というのも広く認知されていない時代だった。
人材派遣として派遣していい職種(ポジティブリスト)というのも当時わずかしかなかった。
しかし、株式会社エー・オー・シーには人材が集まってきていた。

「我々の強みは自社のファクトリーを持つのではなく、いろいろな企業のいろんな製品を作る楽しみというのがあって、いろいろな製品の業務内容を求人で掲載し、それによって多数の人が集まってきたのです。」

令和の時代が幕を開けたタイミングで株式会社エー・オー・シーはリブランディングをし、ロゴマーク等を一新。

リニューアル以前のロゴに使用していたカバのマークには「仕事をカバーする」という意味と、当時いしかわ動物園にいた日本一長寿のカバにあやかり、100年続く会社にしたいという意味が込められていた。

新しいロゴマークは“Arrow Of Comrade”(同志の指標となる)という意味を表現している。

人材派遣業界は悪く言われることもある。リブランディングに際し、「派遣会社は世の中にとって必要なのか」ということを会議で議論したという。

「登録に来た方々を単に右から左へ流すようなやり方をしていると、いつまで経っても派遣という地位の向上はできないし、世の中から認められないと考えています。きっかけを持った方々に対し、その人の人生が幸せになっていただけるように取り組んでいます。幸せとは、仕事を通じて喜びあえる環境を作っていこう、ということ。喜びとは、自分がこういう仕事をしたいという夢があるなら、その夢に近づけていこう、ということです。」

「働く=エー・オー・シー」と思ってもらえることが自分たちのゴールだと本多さんは言う。

将来必要になっていく人材とは

株式会社エー・オー・シーで人材を育てるということに関しては、まず、派遣を通じて派遣先のノウハウを吸収し、そのノウハウを次のステップにつなげていく。さらに、現在、独自で教育センターの立ち上げを予定している。

企業では人が足りないが、なんとかして人を雇おうというよりも機械やAIで効率化をはかっていこうというパワーが大きくなってきているため、今後さらなるIT化や省人化が進むと予想される。しかし、自動化したとしても適正に設備を回していくには結局メンテンナンスをする人間が必要になる。
そこで、株式会社エー・オー・シーの教育センターではメンテナンスができる人材を育てていくことで、今後10年20年と活躍できるような仕事を提供していく。そのための教育を進めていくことに力を入れているという。

「将来、就労できない方々はもっと増えてくると思います。」

5年後あたりに団塊ジュニア世代が介護問題に直面する。
今まで重要な人材だった、それ相応の役を持っていた人たちが親の介護をしなくてはいけないという状況が多数出てくると予想できる。そうなると、就労に関して様々な問題が出てくることが考えられる。

一方、サービス業や福祉は人を必要としているが、そこで働きたいという人が出てこない。必要とされている仕事が選ばれない。自分の希望する職業につけない。というミスマッチが起きてくることが予想できる。

省人化という時代の流れによって、今まで自分たちの作ってきた製品や仕事が仮に奪われたとして、再度、労働市場に参入するのは容易ではない。一旦離脱してしまうと、今までの収入を確保できる会社や仕事がなくなっている可能性が高い。その時代に必要とされる職種であればよいが、キャリアが活かせないとすれば失業。でもサービス業などでは働きたくない。理由は賃金が安いから。しかしサービス業も高い賃金を出すと営業していけなくなる。

「教育センター立ち上げの発端は、一旦リタイアした方々が労働市場で再び活躍できるように、機械を直す人間、機械を動かす人間を育てていこう、専門性を持った技術や技能を身につけてもらおう、という思いからでした。」

今までの日本型の雇用である「男性」「正社員」というパラダイムが崩壊しつつある一方で、未だにこのパラダイムを重視している中小企業もあり、重視すればするほど人がとれないということにも気づけない会社もある。大手が率先してそういう採用を見せていくことで日本全体が変わっていくだろう。

「これからは新卒ありきという状況もなくなるし、優秀な人材で介護などにより仕事がない方、そういった方を少しの時間でも活用することで生産性が上がると思います。多様な人材の活用方法について、企業側が考えていかないといけない。当社も提案していきたいと考えています。」

株式会社エー・オー・シーでは外国人労働者の組合も所有している。
今後、サービス業や製造業等、あらゆる業種で外国人の需要が高まっていくと予想される。
そこに働きたいという日本人がいない限り、誰かがやらないといけない。それがロボットなのか、外から来た人なのか。しかし機械化へ移行するまでには時間がかかるため、そこで外国人が必要になる。

組合の実習生というのは国際協力支援であり、日本の技術・技能を発展途上国の人たちに伝授するというのが目的なので、そこを一労働力として供給するわけにはいかないが、法律は変化していくので、最終的には永住権を持てるようになるかもしれない。

派遣や外国人労働に関しては目まぐるしく法律改正が行われている。
これまでは自由競争だったものが、現在は国に定められた規制に応じる必要があり、派遣の一人当たりのコストが高くなってきているので、派遣をやめて直接雇用する企業も増えてきている。

「正社員を希望している方々にとって、それがハッピーであれば、そういう形で進んでいけば良いと思う。」と本多さんは話す。

企業が優秀な人材を確保するには、そこで働きたいと思ってもらえる魅力ある会社づくりをしていく必要がある。
賃金を上げられないとするなら、他に何を提供することで喜びをあげられるかと考えなくてはいけない。安い賃金で働かせようとだけ思っていたら、この先、人材は集まらない。
人材が成長すれば後々回収できると考えて、魅力ある賃金の設定も必要になるかもしれない。

人々が求める働き方は一通りではなくなってきている。
短時間の勤務を求める人がいる、テレワークを希望する人もいる。
ただ単にフルタイムで働く条件だけにしてしまうと、なかなか魅力づくりができず、人を集めることが難しくなっていく。
その人その人が働きやすい時間をうまく活用することで有能な人材を取り入れることを考えることが必要になってくるだろう。

「働き方を多様化することによって魅力が生まれてくるかもしれません。どのような形にすれば魅力が生まれるのか、どのような方たちが困って仕事に就けないでいるのか、を組み合わせることによって、人の採用にうまくたどりつけるのではないかと思います。」

ビジネスと同じように、「今までこうやってきたから、これからもこうだ」と思っていると続かない時代になってきている。人材についても、様々な人材パターンを組み合わせて自分の会社が成り立つ仕組みを作っていくと、優秀な人材を集めることができるのかもしれない。

キャリアとは

「キャリアという言葉の語源は、ラテン語で轍(わだち)という意味なんです。」

自分が進んできた、その後ろにできる「道」。つまり、人それぞれの実績がキャリアである。
それは自分が通ってきた道にしかない。

「日本ではキャリアというと、経歴とかスキルのことを言いますし、キャリアアップという言葉もありますが、いきなりキャリアが身につくものでもないので、何をしたいのか学んでいくのがキャリアというのかもしれません。」

キャリアというのは特殊な技能のことだけを指すものでもない。
仮に50歳、60歳になって違う仕事に就くためには、適応力が必要になる。適応力とは、いろいろな環境を知ることで身につく。いろいろな業種に行き渡った人も、適応力が高いと言える。

「高度な技術がなくても、適応力を学ぶことも良いのではないかと思います。」

AI、自動化、省人化、そして、働き方の多様性。人間の仕事はこれから急速に変化していく。
そんな時代の「働く幸せ」について、自分の未来をどう進めていきたいのかを考えてみることが、キャリアアップの第一歩に繋がるのかもしれない。


話し手
本多 温史 氏(株式会社エー・オー・シー専務取締役 兼 派遣事業本部長)

聞き手
福島 健一郎(ITビジネスプラザ武蔵交流・創造推進事業運営委員会ディレクター、アイパブリッシング株式会社 代表取締役)

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