#28
担当ディレクター:竹田 太志
竹田ディレクターより 「エステの仕事とは外見をいかに美しくするか、だと思っていました。高畠さんの考えややり方を聞いて、外見だけでなく、中身から変えていく事が重要であると知りました。根幹にぶれない想いがあれば、続けていくことができる「こころの強さ」を教わりました。」
第28回のゲストは、エステティックリラクゼーション for悠 代表 高畠 ともみさん。
高校卒業後、大手エステティックサロン勤務、大手化粧品メーカー美容インストラクターなどを経て、2011年にエステティックリラクゼーションfor悠を設立。NPO法人日本交流分析協会認定交流分析士インストラクター。2018年8月、週末限定のバー「ひうつし」を開業。
女性が笑顔で過ごせれば世の中全てうまくいく。
笑顔を引き出す「天職」
高校を卒業してOLになったものの、将来に展望が開けず数年で辞めてしまったという高畠さん。
ふと見た求人広告の「月収40万円も夢じゃない」のキャッチコピーに惹かれ大手エステティックサロンに就職、これが「天職」との出会いだった。
入社後すぐに数字を上げ、22歳にして副店長に抜擢。その後石川地区の管理や名古屋、大阪、京都と大都市でも責任を負う立場になっていく。管理職になったことでお客様をきれいにするよりも商品を売ることが求められるのに嫌気がさし、「早くエステの世界から足を洗いたい」とばかり考えるように。
そんな中、会社が突然倒産。高畠さんにとって原点に立ち返る出来事となった。
「お客様に対して責任を果たせない状況にすごく苦しい思いをしました。だからせめて地元のお客様だけでもその後もお付き合いしたいと、金沢店を(別の経営者に)引き取ってもらってまたお仕事をさせてもらいました。再びお客様と信頼関係をつくっていく中で、『ともさんがいたから私は変われた』と言われ、エステってすごくいいお仕事だなと感じるようになりました。誰よりも結果を出せる自信も出てきて、自分の『天職』だなって」。
美しく変わっていった女性たちは、さらに服装や髪形、メイクにも手をかけたくなる。そんな女性の「トータルビューティーをお手伝いしたい」と高畠さんは化粧品メーカーに就職してメイクも学んだ。そして10年以上のエステティックサロン勤務の中で、経営者のためのサロンではなく、お客様が主役のサロンをつくろうと独立を決意。
あなたのためだけのゆったり落ち着いた時を、とのコンセプトで「for 悠」を立ち上げた。
「女性の笑顔を引き出すために私は仕事をしています。女性が笑顔で過ごせれば世の中全てうまくいく。これは私がこの先どんな仕事をしようが、どんな人と接しようが、間違いのないことだと思っています。私自身笑顔でいれば家庭にも職場にも笑顔があふれる。女性の笑顔のパワーってすごく大きいんですよ」。
高畠さんは自らの手によってコンプレックスを克服し笑顔になっていく女性の姿に、自信を深めていったという。
結果が出ない客との出会い。挑戦が始まる
どれだけ手を尽くし、時間を尽くしても結果が出ない女性との出会いが、エステの枠を超えた挑戦の契機となった。独立の際にプレゼントしてもらった作家、喜多川泰さんの著書を読み、モチベートしてもらったという高畠さんは、その女性に喜多川さんの本を読んでもらいたいと思い、講演会を開こうとひらめく。
「私は1人でやっている小さなエステサロンのオーナーにすぎません。でも自分がやろうと本気で思えば何でもできる、という見本になれるかと思い、石川を訪れたことのない喜多川さんの講演会をスタートさせたんです。初回は300人に来ていただいて、今も講演会は続いています。私が動いたことで何百人もの人が動く、それってすごいことですよね」。
1人のお客様のために、と始めた講演会。女性は理想の体形を手に入れ、
今では高畠さんが企画するイベントを手伝う「同志」に。
そして講演会を聞いた多くの人が心を動かされ、自分を変えるきっかけを見出せただろう。
さらに高畠さんは、そういった「結果が出ない人」の気持ちを変えられないかと心理学を学び、交流分析士インストラクターの資格を取得した。
高畠さんは交流分析の「人は誰でもOKである」「人は誰もが考える能力を持っている」「自分の運命は自分自身が決め、そしてその決定を変えることができる」という哲学にほれ込んだという。
「経営者になり、周囲から3年後、5年後、10年後の長期目標を立てて動きなさいと言われるのが苦しかった。投げ出しちゃダメだとか、やり遂げなきゃいけないと思ったから。でもその決定を変えることができると知ったとき『自分らしくしていけばいいんだ』と肩の荷が下りました」。
肩の力を抜きつつも、お客様に真摯に向き合いいろんな挑戦を続ける高畠さんの言葉は、
参加者の心にも響いたようだった。
自分の世界を広げるために。大人の語り場「ひうつし」を開業
高畠さんは2018年8月、金沢市片町に金曜、土曜の夜限定のバー「ひうつし」をオープンした。
「最近いろいろやり始めたから、結局この人は何をやりたいんだろうと思いました」という竹田さんの疑問に、高畠さんは明確な答えを示した。
「どんな人でも何かに挑戦したら気づきが生まれる。気づきを得られて自分の世界が広がる。でも、お客様は私の姿しか見ないから『ともみさんだから、できるんだよ』と言う。だったら私だけではなくて、私の周りにいる挑戦している人や、できない理由を挙げるのではなくどうやったらできるかを考えて動く人たちと交流することで、挑戦したり自分を認めたりできるんじゃないかなと思って、そんな交流の場をつくろうとお店をオープンしたんです」。
「ひうつし」とは高畠さんが心のメンターと慕う喜多川さんが講演会などで話す言葉だそう。
「自分で自分のパワーを火おこしする、毎日火おこしするのは結構大変なんですよね。
でも、着火のスイッチを持っていると簡単。だから、この人と一緒にいると元気が出る、この空間にいたらパワーがもらえる、そういう人や場所になりたくて『ひうつし』という店名にしました」。
女性はもちろん男性も、さまざまな年代のあらゆる立場の人々が仕事、プライベート、将来、夢、自身の哲学、いろんなことについて話す大人の語り場になった。
竹田さんは同じ経営者として「非常に面白いし、考え方がすごく柔らかい」と感心しきりだった。
女性を活かすため、尊敬される人になる
少子高齢化が進み、生産年齢人口が減少している。長時間労働がなかなか改善されない中、ダイバーシティや生産性向上が求められ、働き方改革が叫ばれるようになった。
エステを通じ、内面も含めて女性を深く見つめ、心理学や脳科学を学んできた高畠さんは、女性が社会で活躍するために男性と女性の脳の違いに着目し、「女性脳」の特性を理解した上での言葉がけや接し方が重要だと説く。
「男性は理屈で動く。女性は感情で動く。女性は共感してほしいんです。ほめたり指導したりするときは努力した過程を認め、共感してあげることで女性のやる気は生まれます。女性は嫌いな人から言われると歯向かいますが、好きな人から言われるとどこまでも尽くしたくなる本能がある。女性の細やかな配慮に気づき、女性から尊敬される人になれば仕事は進めやすくなるし、セクハラやパワハラも無くなると思います」。
とはいえ、接し方や意識をすぐに変えるのは難しい。
もし「女性は家庭があるから男性ほど仕事ができない」「家庭を守るのが女性の仕事だ」といったこれからの社会にとって“遅れた考え”があるのなら、その考えを持つことを認め、自分も一緒に成長していく姿勢を見せればいいと高畠さんは語る。
一般論として「女性は直感の生物」と言われるが、高畠さんによれば女性は右脳と左脳を両方使って「理屈的に」情報を処理するのに対し、男性は右脳の働きである空間認識や判断に優れていることからむしろ直感的なのは男性という。経営においても、決断力に富んだ男性経営者とそれを補う女性のナンバー2がいる企業はバランスがいいと指摘する。
「男性の狩猟本能、勝つ意欲に、女性の共感性や協調性を身に付けた経営者は、これから先無敵なんじゃないかな。男性と女性、全く異なる生物だと思ったほうがお互いを尊重して楽しめると思います」。
女性は自立を。男性も女性もともに成長し続けられるように
高畠さんが女性との接し方について一通り話し終えた後、「私自身から皆さんにお伝えしたいこと」として一段と強調したのは「女性の自立」だった。
「大好きな彼と結婚できて今は幸せだったとしても、何十年後ってどうなるかわからない。もし10年後、20年後、30年後、この人と一緒にいたくないとなったときに、給料を持ってきてくれるというだけで男性にしがみつかないといけないのは苦痛でしかない。とすれば、金銭的にもお互いが自立して、お互いが仕事に対しても子供に対しても責任を持って、ともに成長し続けられる関係が一番理想だと思うんです」。
女性には「男の人の社会で男の人と同じように戦ったって勝ち目はない。だから女性の武器をどんどん使って男性に助けてもらえばいい。大切なのは敵をつくることではなくて守ってもらえるようにすること」。
そして、男性には「20代の気力体力があるうちにがむしゃらに働いたり、学んだり、人脈をつくったりしてほしい。それが40代以降の自分をきっと輝かせてくれるから」と力を込めた。
普段仕事や生活をともにする人のことを思い浮かべ、1つ1つの言葉を頷くように聞いていた参加者にとっては、気づきの多い内容だったに違いない。高畠さんも言うように、男性も女性も一緒に成長し続けられる関係を築くことが、これからの社会をより明るくしていくのだろう。
話し手
高畠 ともみ エステティックリラクゼーション for 悠代表
(AEAインターナショナルエステティシャン、交流分析士インストラクター)
聞き手
竹田 太志
ITビジネスプラザ武蔵交流・創造推進事業運営委員会ディレクター
株式会社クリパリンク代表取締役