#15
担当ディレクター:村田 智
毎回、さまざまなジャンルで活躍する方々をゲストスピーカーに迎え、新産業の創出へのキモチとモチベーションアップを目指す、モチモチトーク。
2017年12月26日、第15回は、「あなたのSNSの使い方間違ってますよ!」。
聞き手は、村田 智ディレクター
村田ディレクターより
「『SNSマーケティング』という言葉が普通に使われるようになったが、本当の意味でSNSをマーケティングに活用できているお店や企業は多くない。20年間アナログ、デジタルを問わず、マーケティングの第一線で活躍してきた小田柿さんならではの、”考え方”まで聴くことができたのは大変参考になった。」
滋賀県出身の小田柿さんは、金沢工業大学入学を機に金沢に移住。大学4年生の時に会社を起こしたという若き起業家でもある。
現在は、北信越唯一のLINE社の正規代理店「株式会社りんく」の代表取締役を務め、ウェブ戦略やマーケティングの知識を活かした企業へのウェブサービスを提供している。そんな小田柿さんに、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(以下、SNS)を活用したウェブ戦略のヒントを聞く。
滋賀県出身の小田柿さんは、金沢工業大学入学を機に金沢に移住。大学4年生の時に会社を起こしたという若き起業家でもある。現在は、北信越唯一のLINE社の正規代理店、「株式会社りんく」の代表取締役を務め、ウェブ戦略やマーケティングの知識を活かした企業へのウェブサービスを提供している。そんな小田柿さんに、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(以下、SNS)を活用したウェブ戦略のヒントを聞く。
きらびやかなHPよりも、HPまでの導線
まず小田柿さんは、そもそもウェブ戦略を行う上で基本となる考え方は「選択と集中」だと語る。 「ウェブ戦略は、選択と集中です。あれも、これも、とならないことが大事です。強みや、SNSの特性といった現状を知って、ターゲットや使うツールを絞ります。そして、企業やお店の持つ強みを活かした戦略を打つことで、費用対効果を最大限にしていきます。」
さらに基本となるツールは、スマートフォンであるということも念を押す。
「テレビやラジオの『耳寄り情報』から、『目からの情報』を得るのが日常になりました。加えて、パソコンよりもスマートフォンなんです。スマートフォンユーザーを意識して戦略を打つことが重要です。ホームページ(以下、HP)はいらないんじゃないかというオーナーもいるんですが、それは違うと思います。あるかないかなら、絶対ある方がいいです。ただし、きらびやかなHPを作るよりも、導線に力を入れた方が良いんです。」
小田柿さんの言う「導線」とは、ウェブ上において、企業や、お店固有のHPにたどり着くまでの道筋のことである。あるいは、検索した情報から実際の店舗に行き着くまでの道筋である。どれだけわかりやすく魅力的なHPを作成したとしても、情報を探している人がそこを訪れることができなければ、意味がない。
「例えばお店の名前で検索する人は、そのお店の常連か、もうそのお店に行こうとしている人です。どこに行こうか、と迷っている人が調べた時にたどり着くようにする、それが戦略です。」
その導線の入り口となるのが、ブラウザでの検索と、SNSだ。
その二点を活用してHPまでの導線を描いていくことが、小田柿さんの勧めるウェブ戦略である。
「例えば、金沢にある学習塾を知りたいとすると、多くの人は検索エンジンで『金沢(地域)+学習塾(+目的)』と入力して検索します。実際に検索してみると、まず、「広告」が最初に出てきます。けれども広告ページは、たいていの人がクリックすることなく飛ばします。あがってくるのは、「マップ情報」です。さらにその次に「まとめサイト」が出てきます。そして、やっと企業のHPが出てくるという順番です。ウェブサイトを運営するときには、SEO(Search Engine Optimization)※に力を入れろと言われていますが、SEO対策を頑張っても、上がってくるのは広告とマップとまとめサイトの次の位置なんです。だったら、マップと、まとめサイトに情報が載るようにした方が有効なんです。」
このマップの上位に掲載されるための対策をMEO(Map Engine Optimization)というが、このMEO、前述のSEOと比較すると、取り組んでいる企業がまだまだ少ないという。
「本来、マップの下に名前があがる企業やお店というのは、今、自分がいる位置から近い3つが挙がっているだけなんです。でも、ここに掲載されているとなると、信頼感は高まりますよね。だから、MEOに力を入れて意図的にマップ上に企業名や店名が挙がるようにできれば良いと思います。かかる費用も、SEOと比較すると低コストで済みます。」
※SEO(Search Engine Optimization):検索エンジン最適化。検索エンジンでキーワードを入力して検索した場合に、ホームページがより上位に表示されるようにウェブサイトの構成などを調整すること。
Instagramは検索エンジン
では、導線のもうひとつの入り口であるSNSは、どう活用すれば良いのだろう。
現在、日本で主に活用されているSNSは、LINE、Instagram、Twitter、Facebookの4つが代表的である。数年前であればFacebookが中心という印象を持っている人も多いと思うが、すでに傾向は変わってきているという。
特に、Instagramの伸び率は、めざましいものがあるらしい。
「かつては1位がLINEで、2位がFacebookで、3位がTwitterだったんですが、アクティブ率(会員登録をしていて月1回は使っている人)でいうと、Facebookは最盛期の半分程度に減っています。また、利用者の層が偏っていて、一般の人や主婦は、あまりFacebookを見ていないんです。どちらかというと、FacebookはBtoB(Business to Business)向けですね。一方、InstagramはBtoC(Business to Customer)向け。Instagramはここまで人気が出る前にFacebookに買収されていますが、現在はアクティブ数でFacebookを超えていますし、この1年で活用する企業も急増しています。複数アカウントを切り替えられるようにもなったので、使いやすくなりました。僕自身も、個人アカウントと会社のアカウントを併せて持っています。」
「SNS戦略は徹底的に絞ること」と語る小田柿さん。特に今、店舗や企業が活用すべきSNSはLINEとInstagramであり、それぞれの特性を活かして戦略を打つことが効果的だという。
まず、Instagram。店舗や企業が用いる上で意識する点は、投稿の写真に一貫性を持たせることだと、小田柿さんは指摘する。
「パっと見て、何をやっているお店(企業)なのかが分かるようにすることが重要です。一貫性を持たせた方が、見た目もきれいです。Instagramに向いている業種は、美容、飲食、施設や、商品自体が写真映えする企業さんですね。ブライダル業界も、Instagramをした方が良いと思いますし、観光面でも非常に有効です。」
そもそもSNSというと、友人や知人に自分の近況を伝えて、反応を募るものだと思っている人も少なくないだろう。しかし、企業やビジネスという視点となるとSNSの使い方は変わってくる。特にInstagramは若者の検索エンジン的役割を担っているという点への注目度は高い。
「Instagramでポイントになるのは、それが検索エンジンとして使われているということです。Instagramで、『いいね』の数やフォロワー数を集めることに重きを置く人がいますが、それはFacebookでの考え方です。」
Instagramは、写真共有アプリケーションである。
つまり、画像を軸としたSNSサービスであり、視覚的に情報を探すのにはもってこいのツールなのだ。
「例えば、20代で結婚した後輩を見ていると、式場、ブーケ、ドレスすべてをInstagramで検索して決めています。なぜInstagramなのかというと、リアルだからです。アパレル商品を探す場合、検索エンジンの画像で出てくる画像は、モデルさんがほとんどですが、モデルさんの画像では自分が着た時とのギャップがあります。一方、Instagramの投稿は素人が着ていたりする場合が多い。だから自分と近い、よりリアルな感じがするんです。」
テキストを探すよりは、ずっと瞬間的に検知することができ、さらに、身近でイメージが湧きやすい情報を得ることができる。加えて、Instagramは地図機能が付随しているため、Instagramアプリの中で、検索から実際の行動まで完結することができる。
「ウェブの世界がリアルの世界と違う点は、『離脱しやすい』ということなんです。
いかにアプリを離れずに、アプリ内で行動を完結させるかが重要になります。例えば、Instagramでお店を探している間に友達からLINEが送られてきたとします。最初はそれを無視してお店を探し続けますが、もし、Instagramのアプリだけで完結できない情報があると、一旦Instagramを閉じて、検索エンジンを起動してウェブで検索することになります。しかし、一旦Instagramを閉じた段階で、連絡がきていたLINEを見ます。そうすると、もう友達との会話がはじまってしまい、検索はしないまま終わってしまうこともあります。これが『離脱』です。ここで、離脱させずに導線をつくるのが大事なんです。検索をしやすくすることが一番なんです。」
では、実際にInstagramで検索されやすくするためにどういう点に配慮すれば良いのだろう。
「Instagramでは、総合、ピープル、タグ、スポットで検索できます。まず、スポットで出て来るようになっていなくては、導線ができていないということです。加えて、ハッシュタグが非常に大事です。インスタは上位にあがってくれば見てもらえます。検索エンジンだと考えて、検索結果の上位にあげることを考えてください。」
LINE@とは、なんぞや
続けて、Instagramと併せて活用すべきと小田柿さんが推す「LINE」。
個人的なメッセージツールという印象が強いが、ビジネスで利用されるのが「LINE@」である。
LINEとは、「親しい間柄でのコミュニケーションに特化した」 コミュニケーションツールである。一方、「情報発信やビジネスに活用」できるビジネスアカウントが、LINE@アカウントだ。(公式サイトより引用)
「LINE@は、日本中のLINEユーザーに対してお店からプッシュ通知(外部から通知を送信できる仕組み)で情報を届けることができるものです。Facebookなどは、そのページに来てもらって情報を見てもらいますが、プッシュ通知はダイレクトにその人に情報が届きます。そんなことができるのは、メール会員か、LINEくらいしかありません。」
しかし通知を送るには、基本的にアカウント同士で友だちになっている必要がある。
「新規集客はやっぱりInstagramを活用すべきだと思います。Instagramで検索させ、その後、実際に体験してもらいます。そして、再訪してもらうために、LINE@で働きかけるんです。来てくれたお客さんに情報を出して、再訪に繋げる。忘れたころにプッシュ通知で情報を出すということが効果的なんです。」
そんな、リピーターにつなげるためのLINE@。使う利点は、「顧客の囲い込み、メッセージの配信やクーポン券による集客、開封率の高さと即効性、離脱率の低さ」が挙げられるという。加えて、LINE@はクーポン配信や抽選機能、アンケート機能、ポイントカード機能など、さまざまな機能があるので、企業や店舗の特性に応じて使い方を取捨選択できる点も魅力だ。
「決められたワードに対して、決められた返事を返すこともできます。例えば、のとじま水族館のLINE@アカウントに『あざらし』と送ると、水族館にいるアザラシの写真と説明が返信されます。子どもたちがその写真を見て、『また連れて行って』という行動につながります。」
通俗な表現だが、ユーザーが多様化しているからこそ、店舗、企業側もさまざまな方法を使って顧客にアプローチすることが求められるこのご時世である。
めまぐるしく生まれ、進化し変化するツールを、取捨選択し、さらに使いこなしていくのはなかなか難しそうだが、より身近でリアルな情報が求められていることは間違いない。
自分たちに合ったツールで、こまめに丁寧な情報を提供することが必要なのだろう。
とにもかくにも、情報の中身。つまり、提供するサービスや品物を磨くというのが、一番の前提条件であることは言うまでもないのだろうけど。
話し手
小田柿 陽介 株式会社りんく 代表取締役社長
聞き手
村田 智 ITビジネスプラザ武蔵交流・創造推進事業運営委員会ディレクター(株式会社MONK 代表取締役)
文
鶴沢木綿子